全国ダイバーシティ・ネットワークダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(牽引型)

ITの力で、サステナビリティに貢献したい。挑戦を重ねて切り開いた今。

外資系IT企業
鈴木かの子さん

Profile
岡山県倉敷市出身。2021年大阪大学工学部環境・エネルギー工学科卒業。2023年大阪大学大学院工学研究科環境エネルギー工学専攻地球循環共生工学領域 博士前期課程修了。2021年度人工知能学会優秀賞を受賞。2023年に外資系IT企業に新卒入社、営業チームでプリセールスエンジニアとカスタマーサクセスを担当。
「やりたいことをやろう」「興味のあることに挑戦しよう」。そう言われても、なかなか一歩踏み出せない人はたくさんいるでしょう。大阪大学工学部出身の鈴木かの子さんのモットーは「やりたいことをやる」。学生時代から多くのことにチャレンジし、その経験を活かして現在は外資系IT企業で働いています。鈴木さんがどうやってやりたいことを実現してきたのか、これまでの歩みと現在について、お話を伺いました。

環境問題を解決したい。幼少期に抱いた思いが原点

―鈴木さんは環境・エネルギー工学科のご出身ですが、環境問題やエネルギー問題に興味を持ったきっかけは?

私は小さい頃から動物が大好きで、あるとき「北極のシロクマが温暖化で危機にさらされている」というドキュメンタリー番組を見て、「なんとかしなきゃ!」と思ったのが最初のきっかけです。その後、小学6年生のときに妹が生まれ、「次世代のために環境問題を解決しないと」という思いがより強くなりました。

―小学生で次世代への意識が芽生えたとは、かなり早いですね!大阪大学に進学しようと思ったのはどうしてですか?

進路を考える中で、環境問題とエネルギー問題は密接に関わり合っているので、両方を学べる大学に行きたいと思いました。自分なりにいろいろと調べているうちに、大阪大学工学部の環境・エネルギー工学科を見つけたんです。

―ご出身は岡山ですが、関西の大学に行くことのハードルはなかったですか?

関西に進学する友達も多かったし、ハードルはそれほど感じなかったですね。それに、実は3歳まで兵庫県西宮市に住んでいたんです。私自身はほぼ記憶はないですが、両親が関西に馴染みがあったので、私を送り出すことに抵抗がなかったんじゃないかと思います。

―学部を卒業した後は、修士課程(編集註:博士前期課程。以下同じ)に進んだんですよね。

はい。阪大工学部では4年生から研究室に配属されますが、やっぱり学部の1年間だけでは研究もほとんどできないし、修士の2年も含めて、自分の研究テーマに取り組みたいと思いました。工学部の学生は約90%が修士に進学するので、私にとって自然な選択でしたね。

―当時どんな研究テーマに取り組んでいたんですか?

もともと関心を持っていた環境問題から少し領域を広げて、持続可能な社会の実現をミッションに掲げて研究していました。地方自治体の都市計画書などをAIが分析し、SDGsの17のゴールとの関連性を判定するシステムを開発。具体的には、BERT(バート)という自然言語処理モデルをベースに、SDGsに関するコーパス(大量のテキストデータを集めたデータベース)を用意してトレーニングを行いました。

大学は「定額学び放題」。興味を持ったことに挑戦する日々

―研究の他にも、学生時代に力を入れて取り組んだことはありますか?

「自分が興味を持ったことをやってみる」と決めて、いろいろなことに取り組みました。例えば入学した頃は、体育会のボート部に所属していました。私は小中高でバスケをやっていて足腰が強かったので、それを活かせる競技に挑戦してみようと思って。でも、シングルスカルという一人乗りの競技で西日本大会に出て入賞し、自分なりに納得がいったので辞めることにしました。学生時代にやりたいことが他にもたくさんあったので、両立は難しいなと思ったんです。

―他にやりたいこと、というのは?

ボート部を辞めて、本当は留学に行くつもりでした。でも単位が足りず、結局行けなくて。その代わりに「国際交流科目」という、阪大の外国人留学生と一緒に受講できる授業を受けてみることにしました。留学生の中に混じって英語で授業を受けるうちに、留学に行かずとも英語を話せるようになりました。留学生の寮にもよく遊びに行っていましたね。

―阪大の環境を活かして、国内にいても語学力を伸ばすことができたんですね。

そうですね。英語を身に付けたくて、外国語学部のスピーキングやライティングの授業も履修していました。大学は「定額学び放題」だと思って、他にも言語学や社会学など、卒業要件単位に含まれるかどうかは関係なく、興味のある授業はどんどん受けました。

―「定額学び放題」、いいですね。特に印象に残っている授業はありますか?

国連大学との共同授業が面白かったですね。グループワークの課題があり、アメリカやバングラデシュの学生と一緒に取り組んでいく中で、やっぱりお互いのバックグラウンドが違うからこそ、ちゃんと言葉にしないと伝わらないんだなと実感しました。あと、最終発表のとき、ゲスト講師の方が「あなたの話し方がすごく良かった」と褒めてくださって。私は英語がそれほど流暢ではなかったけど、たとえ自信がなくても、とにかく堂々と話すのが大事なんだなと、身をもって学ぶことができました。

―部活や学業の他に、大阪大学自然科学系分野女子学生ネットワーク「asiam(アザイム)」の活動にも関わっていたんですよね。

はい。私自身は、理系を選ぶときも工学部に進学するときも、親から反対された経験がなかったんです。「女子だから」というハードルを特に感じていなかったので、理系学部は女子学生比率が低いという課題があること自体がピンとこなくて。だからasiamの活動に興味を持って、参加してみることにしました。

―実際にどういった活動をしていたんですか?

「どうして理系学部に来たの?」とasiamのメンバー同士で話してみると、「昔から車が好きだった」など、幼少期から興味が芽生えていたケースが多いとわかって。私も子どもの頃、ボールペンの構造が気になり、何本も分解して壊してしまった経験があるので(笑)、やっぱり理系選択の原点は幼少期にあるなと思いました。そこで、子どもたちが理系に興味を持つきっかけを作れたらと、箕面市教育委員会と連携して小学生向けの科学教室を企画しました。

―科学教室はどんな内容でしたか?

「見た目もキャッチーなものがいいよね」とみんなで話し合い、水と油とビーズが三層に分かれる現象を利用した「キラキラボトル」を作る実験をしました。子どもたちが「すごーい!」「なんで?」ととても喜んでくれてうれしかったですね。

―小さい頃から理系に興味を持つきっかけを作れたんですね。

はい。きっかけの一つになったんじゃないかと思います。あともう一つ、私たちが重視したのは、保護者へのアプローチです。大人向けに、実験の原理を説明するプリントを用意して、家に帰ってからも科学について話をするきっかけづくりを心がけました。私や他のメンバーは、理系進学を反対された経験がなかったけど、実際には親や先生など周りの人たちがハードルとなってしまうケースもあるだろうと思ったので、理系に対する理解を促す必要があると考えたんです。

asiamと箕面市教育委員会との連携により開催された「ワクワク科学教室」の様子

経験してきたことは、きっと後からつながっていく

―学生時代にたくさんのチャレンジをしてきた鈴木さん。卒業後の進路は、どのように考えましたか?

研究でAI開発に取り組んでいたので、AIに関わる仕事に就けたらと思い、IT業界を中心に就職活動を行いました。また、ずっと関心を持っているサステナビリティの実現に、何らかの形で関わる仕事に就きたいと考えていました。

―その2つの観点で、就職先を選んだんですね。

はい。サステナビリティを実現するには、一人ひとりの行動変容が不可欠です。今働いている会社は、世界的IT企業であり、かつ消費者向けのサービスをたくさん持っているので、ちょっとした工夫をすることで、多くの人々の行動を変えられるチャンスがあるかもしれないと思いました。それに、グローバルな環境で働くのは刺激的で面白そうだなと思ったし、採用面接のときに一方的に評価するのではなく「君はどう思う?」と魅力を引き出そうとしてくれるのが心地よかったのも、入社の決め手でしたね。

―現在はどんな仕事をしていますか?

入社以来、営業組織に所属しています。当社の製品やサービスの価値をお客さまに正しく伝えて提案し、導入までサポートするのが主な仕事です。

―仕事をする中で、学生時代の学びや経験が活きていると感じることはありますか?

たくさんあります。仕事を進める上で、アメリカの開発チームや、インドやシンガポールの営業チームなど、各国のさまざまな部署との連携が必要です。立場や役割が違えば、それぞれの考え方や見えているものも異なるため、自分と相手は違うことを前提にしてコミュニケーションを取らないといけません。そんなとき、学生時代に各国の学生とグループワークをして、「ちゃんと言葉にしないと伝わらない」と学んだ経験が活かされていると感じます。

―言語学や社会学など、興味のあることを幅広く学んだ経験も今につながっていますか?

そうですね。例えば言語学を学んだ経験は、のちに研究でAIによる自然言語処理を扱う際に、思わぬ形で役立ったことがありました。このように過去の点と点がつながっていく瞬間が、今後もたくさんあるはずです。私がこの考え方に至ったのは、Apple創業者のスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で語った「Connecting the dots(点と点をつなぐ)」という言葉がきっかけです。中学生のときにこの言葉に出会い、それ以来ずっと心に留めています。

「やりたいことをやる」ために大切なこと

―大阪大学ダイバーシティ&インクルージョンセンターでは、阪大女子学生の「内に秘める強い意志」を”will”と呼んでいます。鈴木さんのこれまでの選択を振り返って、”will”と言える信念は何ですか?

私は「やりたいことをやる」ことをずっと大切にしてきました。なぜなら、実際にやってみると「めっちゃ楽しい!」と思うことと、「やっぱりちょっとイマイチかな」と思うことがあるから。自分が本当に好きなことを見つけるには、まずやってみることが必要なんです。

―「やりたいことをやる」ために、心がけていることはありますか?

3つあります。1つは、やりたいことをやるためにちゃんと自分で調べて、「待ち列を見つけて、できるだけ先頭に行く」こと。2つ目は、先ほど話した「Connecting the dots」。「こんなことをしても意味がないかも」と思わずに、何事も「Connecting the dots」だから、まずはやってみることを大切にしています。3つ目は、「支えてくれる人と環境に感謝をする」こと。1人では何もできないし、そもそもできる環境があることに感謝しないといけないと、いつも思っています。

―「待ち列を見つけて先頭に行く」とは、例えばどんなことでしょうか。

例えば私は昨年、当社が主催するマーケティングイベントのメインステージに登壇しました。前年のステージを見て「かっこいいな。ここで喋ってみたいな」と思ったんですけど、闇雲に「やりたいです」と言っていても実現しないし、ただ順番を待っていても回ってこないんですよね。そこで、まずマーケティングチームが人選をしていることを突き止め、次に誰が決裁権を持っているのかを調べて、その人に直接「私、出たいです」と言ったんです。すると、登壇者を決める時期になって「そういえば出たいと言っていたよね」と声をかけてもらうことができました。

―憧れの舞台に登壇してみて、どうでしたか?

目の前で約1000人、オンラインで数万人が見ているという状況で、さすがに緊張しましたね。これだけ多くの人に注目される会社だという実感が湧いたし、新卒3年目でこの舞台に立つ機会を与えてもらったことに感謝し、仕事をもっと頑張ろうという気持ちになりました。でも、登壇自体は私が想像していたものとは違った、というのが率直な感想でした。自社の商品やサービスの最新情報を発表する場だから、自分の好きなように話せるわけではなく、ある程度用意された内容を話す必要がありました。それに私はあまり楽しみを感じないんだなと、やってみて気づいたんです。

―やってみたからこそ気づけたんですね。そもそも「まずやってみる」こと自体に、勇気が出なくて二の足を踏んでしまう人も多いかと思いますが、鈴木さんは昔から自然にできていたんですか?

私も元からできていたわけじゃなくて。今振り返ってみると、大学のボート部を退部した経験が、一つのきっかけだったかもしれません。自分がやりたくて始めたことをやり抜けず、途中で辞めてしまうのは後ろめたさがあったし、部活というコミュニティを抜けることへの恐怖心も大きかった。でも、部活を続けるか、新しいことに挑戦するのか、葛藤する中で「今やりたいことをやる」と決めたんです。すると、今度はまた新しい世界が待っていました。

―さまざまな授業を受けたり、留学生と交流したり?

はい。そうやって新たな学びや経験を得ることができたし、友達もたくさんできました。「一度始めたことをやめても、どうにかなるんだ」とわかったからこそ、「じゃあ何でも挑戦してみたらいいんじゃない?」と思えるようになったんです。

―そんな鈴木さんの経験談に勇気をもらえる人がいるんじゃないかと思います。最後に、進路に悩んでいる中高生に向けて、メッセージをお願いできますか?

もしやりたいことがあるなら、「やっても意味がないかもしれない」と思わずに、一度やってみてほしいと思います。やってみて、もし違ったらやめてもいい。一貫していなくてもいいし、今の環境にとらわれなくていい。そのときの自分の気持ちを素直に受け止めてチャレンジしたら、きっと新しい世界が開けるはずです。

スティーブ・ジョブズ「Connecting the dots」と
エイミー・カディ「ボディランゲージが人を作る」

中高時代に出会った2つの動画が、今も私の軸になっています。1つ目は先ほども挙げた、スティーブ・ジョブズが「Connecting the dots」について語ったスピーチ
もう1つは、社会心理学者のエイミー・カディによるTEDトーク「ボディランゲージが人を作る」です。「自信がなくても自信がある振りをすることで、やがて本物の自信へと変わっていく」という彼女の考え方を取り入れ、人前で話すときは堂々と振る舞うことを心がけています。

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